COLUMN

ホーム » コラム » 2024年問題とは?働き方改革によって懸念されている内容や対策方法を解説!

2024年問題とは?働き方改革によって懸念されている内容や対策方法を解説!

2024年問題

過酷な労働環境で働く人のために2024年4月1日より施行されるのが、働き方改革関連法です。

労働者のためを考えて施行される法律ですが、実現には大きな課題があり、その課題は「2024年問題」と言われています。なぜ2024年問題といわれるのでしょうか。

本記事では、2024年問題といわれる、働き方改革によって懸念されている内容や対策方法を解説していきます。

2024年問題とは

2024年問題とは働き方改革関連法案の改正により、2024年4月1日以降、例外的に認められていた時間外労働※1の上限規制の猶予が終了することから発生する諸問題のことを指します。

※1.(建設業、ドライバー、医師等)

物流セクターにおいては、トラックドライバーの時間外労働時間の上限が960時間までに制限されることによって生じる問題のことを言います。

960時間というと、かなりの長時間に思われますが、事前調査では約30%がこの時間を超過している状態であることが判明しています。

本改正は、ただ単純に労働時間を制約するというものではなく、労働人口の減少が見込まれる日本において、様々な業態における生産性の向上は、必要不可欠な対応であり、日本経済の基幹産業の1つである物流機能の抜本的構造改革は、待ったなしの状況にあると言えます。

このため、従前の運送事業者を中心とした対応ばかりでなく、物流の上流にあたる荷主企業も巻き込んだ根本的な対応が求められている背景があります。

現状の物流業界の課題

どのような問題があるから、働き方改革が施行されるのでしょうか。

まずは、働き方改革が導入される要因となった、現状の物流業界の課題から見ていきましょう。

長時間労働の常習化

今日の物流業界では、長時間労働の常習化が問題視されています。トラックドライバーに関しては、全産業の中でも超過労働時間が3倍になっているのが実状です。

トラックドライバーの労働時間が長くなる原因には、渋滞や悪天候といった交通状況の影響もありますが、荷待ち時間や荷役時間の影響が特に挙げられます。

ドライバーの人材不足や高齢化

残業過多や低賃金などの理由によって、トラックドライバーとして働きたがる若年層が少なく、トラックドライバーの年齢が高齢化するのと同時に、人材不足になっています。

そのため、トラックドライバーをはじめとする運送、物流事業が魅力ある業界となり、新しい担い手が創出されなければ、いずれは荷物が運べなくなると懸念されています。

販売チャネルの多様化による業務量の増加

今日のIT業界の目覚ましい進化やコロナウイルスの影響などもあり、日々インターネットでの買い物の利用率が増加し続けています。

それにより、翌日配送や再配達指定など、エンドユーザーへのサービスが向上していますが、トラックドライバーの労働的負担も増加しています。

トラックドライバーの労働的負担が増えると、離職も加速してしまうため、人材不足が起こる負のループが問題となっているのです。

働き方改革の内容

拘束時間や運転時間の制約が厳しくなることは事実ですが、時間的制約は今回の法改正以前から導入されていました。

例えば、

・1日の拘束時間最大は16時間

・月間は最大293時間

などなど。

そのため、今回の働き方改革の最大のポイントは、運送事業者を主体とする対応改善要請から、荷主を巻き込んだ対応へとシフトが起こっていることにあります。

運転以外の料金支払いの明確化、下請け手数料の支払いの明確化、多重下請構造の解消に向けた動き、実運送体制を荷主が把握していないことが運送責任の不明瞭化を生んでいる等、各関係省庁からは厳しい警鐘が各種なっております。

時間外労働の上限は年間960時間

2024年3月末までは猶予期間とされ、2024年4月1日より、36協定を締結している場合の時間外労働の上限が年960時間に定められます。その他の時間外労働時間に関する詳細な内容は以下の通りです。

  • 時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満とし、2〜6か月平均80時間以内とする規制は適用されません。
  • 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月までとする規制も適用されません。

引用:国土交通省

拘束時間や休憩時間の基準改正(1日・1ヶ月・1年)

働き方改革では、拘束時間や休憩時間の基準も、1日・1ヶ月・1年を目安として改正されます。

【拘束時間】

1日13時間以内が基本
・特例として、最大15時間、14時間を超えての拘束は週2回が目安
・宿泊を伴う長距離貨物輸送の場合は、16時間まで延長可(週2回に限る)
1ヶ月原則284時間以内
・特例として、労使協定の締結で、1年のうち6ヶ月までは1ヶ月310時間までに延長が可能
1年原則3,300時間以内
・特例として、労使協定の締結で、年間3,400時間までに延長が可能

【休息時間】

勤務終了後、継続11時間以上与えるように努力することを基本とし、9時間を下回らないようにする

  • 宿泊を伴う長距離貨物輸送の場合は、1週について2回に限り、継続8時間以上の休息期間を設ける
  • 休息期間が9時間を下回る場合は、運行終了後に継続12時間以上の休息期間を与えなければならない

引用:厚生労働省「改善基準告示の見直しについて」

事業者別の求められる対応策

2024年4月1日より施行される働き方改革によって、事業者は適切な対応が求められます。事業者別の求められる対応策は以下の通りです。

荷主・物流事業者(流通業務総合効率化法)

荷主(発荷主、着荷主)・物流事業者(倉庫、トラック、港湾運送、鉄道、航空運送)に対しては、これまでの商慣行を見直して、荷待ちや荷役時間の削減・積載率の向上などを図ることが求められます。以下が内容詳細です。

【全ての事業者】

  • 荷主・物流業者に対して、物流効率化のために取り組むべき措置について努力義務を課し、当該措置について国が判断基準を策定。
  • 上記取組状況について、国が判断基準に基づき指導・助言、調査・公表を実施。

【一定規模以上の事業者】

  • 上記事業者のうち、一定規模以上のものを特定事業者として指定し、中長期計画の作成や定期報告等を義務付け、中長期計画に基づく取組の実施状況が不十分の場合、勧告・命令を実施。
  • さらに、特定事業者のうち荷主には物流統括管理者の選任を義務付け。

※法律の名称を「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」から「物資の流通の効率化に関する法律」に変更

引用:「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案」を閣議決定

トラック事業者(貨物自動車運送事業法)

トラック事業者へは、多重下請け構造を是正し、実運送事業者の適正運賃収受を図ることが求められます。内容詳細は以下の通りです。

  • 元請事業者に対し、実運送事業者の名称等を記載した実運送体制管理簿の作成を義務付け。
  • 荷主・トラック事業者・利用運送事業者に対し、運送契約の締結等に際して、提供する役務の内容やその対価(附帯業務料、燃料サーチャージ等を含む。)等について
  • 記載した書面による交付等を義務付け。
  • トラック事業者・利用運送事業者に対し、他の事業者の運送の利用(=下請けに出す行為)の適正化について努力義務を課すとともに、一定規模以上の事業者に対し、
  • 当該適正化に関する管理規程の作成、責任者の選任を義務付け。

引用:「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案」を閣議決定

軽トラック事業者(貨物自動車運送事業法)

軽トラック運送業においては、死亡・重傷事故件数が最近6年で倍増(保有台数当たりの件数も5割増)しているため、事故を防止するための対策が求められます。内容詳細は以下の通りです。

  • 軽トラック事業者に対し、①必要な法令等の知識を担保するための管理者選任と講習受講、②国土交通大臣への事故報告を義務付け。
  • 国交省による公表対象に、軽トラック事業者に係る事故報告・安全確保命令に関する情報等を追加。

引用:「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案」を閣議決定

2024年問題として懸念されている内容

働き方改革によって、2024年問題として懸念されている内容を解説していきます。

ドライバーの収入減少による離職

時間外労働の上限が変更されたことによって、トラックドライバーの収入が減少する可能性があります。

トラックドライバーは、歩合制の給料形態であることが多く、受け取れる残業代が減少してしまうと、生活ができないと考える人もいるでしょう。

それにより、離職する人が増加して、人材不足が加速すると懸念されています。

配送量の減少による企業の売上げ低下

トラックドライバーの時間外労働時間の上限が定まることで、配送できる荷物の量も減少すると考えられています。

限られた労働時間の中で、これまでと同じ量の荷物を運ぶとなると、今以上のコストがかかることになるため、企業の売り上げが低下するともいわれています。

運賃の値上げによる物流コストの増加

働き方改革によってトラックドライバーが減少した場合、給料を上げてでもドライバーを確保しようとする企業が増加するでしょう。人件費が増加すれば、運賃を上げて増加した分のコストを補うのが一般的です。運賃の値上げによる物流コストの増加は、利益や売り上げの減少に繋がる恐れがあるため、荷主側からすれば頭の痛い話になります。

法律違反をした場合は罰則となる

2024年4月1日より、働き方改革が施行された後も、2024年4月1日以前と同じ働き方をしていた場合、法律違反となります。法律違反をした場合は、6ヶ月以下の懲役、又は30万円以下の罰金が設けられるので、新しい法律にはちゃんと従うようにしましょう。

2024年問題の対策方法

働き方改革によって生まれる2024年問題ですが、対策方法がないわけではありません。悪い影響のみを残すのではなく、適切な方法を取り入れて、良い側面も生み出していきましょう。

賃金増やインターバル制度による人材の確保

2024年問題の内の一つである、人事不足を防ぐためには、賃金増やインターバル制度によって、ライフワークバランスを保ちやすくするのがよいでしょう。

2024年3月31日までは、上限時間を超えて働いていたトラックドライバーは、残業代を含めた賃金で生活をしています。しかし、新しい上限時間の設定によって、従来と同じ程度の給料をもらうことが難しくなれば、生活が立ちゆかなくなってしまうのです。

そうなれば、離職という負のループが生まれてしまう原因にも繋がります。

また、勤務形態にも配慮し、勤務終了から次の勤務が開始するまでに、一定時間を確保することで、しっかりと体を休めてプライベートも楽しめます。特に、近年の若年層はライフワークバランスを重視している傾向にあるので、若年層が求めている理想の働き方を叶えていくのが、人材不足を改善させる鍵といえます。

勤務管理の徹底

デジタコを利用した、労働時間の適切な管理も重要です。時間外労働をしているけれど、しっかりと勤怠管理がされていない会社で働きたがる人は存在しません。

デジタコを導入して、速度や距離、時間などの管理を徹底し、正確な労働時間の把握や、データを元に業務の効率化を測るなど、工夫を施しましょう。

労働環境の改善

労働環境の改善も、2024年問題の対策として有効です。不当な時間外労働を防ぐために、残業を許可制にする、収入が減少した場合は副業を解禁するなど、働く環境を自由化してくると、若年層のニーズにマッチし、人材確保に繋がります。

時間外労働といえども、緊急性がなくその日に処理する必要がない業務をしている可能性が考えられます。緊急性のない業務に関しては、時間外労働をしなくとも良いように、どうして残業をする必要があるのか、業務が必要な理由に行う内容、所要時間などを事前に書面で上司に提出することにより、適切な時間外労働のみを行う環境にすることが可能です。

また、時間外労働の時間が減ることで収入も減少して困るという場合は、副業を許可するのもよいでしょう。自社での人件費負担が軽減される上、若年層が求める多様性にマッチしてきます。

物流システムのDX(デジタルトランスフォーメンション)化

2024年問題の対応策としてポイントになるのが、業務の効率化です。

業務効率化のため物流システムをDX化させていくことは、社会的に大きな期待が寄せられている一方で、多くの企業ではその推進に課題があり、対応出来ていないのが現実です。

課題としては

・導入プロジェクトを推進するための人材不足

・データ分析によって運送改善を推進する人材不足

・課題解決をするための網羅的なソフトウェア・サービスの不在

まとめ

物流業界に大きな変化をもたらすのが働き方改革ですが、2024年問題を上手く乗り切るためには、法律に準ずるだけではなく、業務の効率化や若年層のニーズを取り入れるなど、工夫をしていくことが重要といえるでしょう。

DXソリューションのご相談・お問い合わせ

メールフォーム