医療現場を止めない物流へ。メディエントランス社が実現したAGV導入による次世代物流DX
CLIENT
- 事業成長により出荷量が増加する一方、旧倉庫はキャパオーバーで出荷制限がかかる
- WMSすらない完全アナログ運用で、ピッキングだけで40名が1人あたり10km歩く
- コロナ禍でも需要増が続く中、「明けてからでは間に合わない」と倉庫移転を決断
- メディエントランス社の手作業で培ったノウハウをAGVに反映できる柔軟性
- 「どうやったらできるか」を前向きにチャレンジする姿勢
- AGV79台 + WCS(倉庫制御システム)による自動化倉庫を構築
- PALの責任者が現地倉庫に駐在し、システムと現場の両面オペレーションを一括管理
- 商品入りの箱と梱包用の箱を抱き合わせる「カルガモ方式」など、独自の改善を継続実施
- ピッキング人員を40名以上から12名へ約70%削減
- 作業者1人あたり歩行距離は1日10kmからステーション内の数歩へ激減
- 旧倉庫で受けていた出荷制限を完全解消し、事業成長を物流が支える体制を実現
INDEX
メディエントランス株式会社は、医療機器・医療材料を全国のクリニックや医療施設へ届ける通販事業を展開する企業です。WEB・カタログ掲載合わせて約7万点という膨大な商品を扱い、全国7万件のお客様へ「小ロット・即日」で出荷するという、極めて高度な物流オペレーションを実現しています。
しかし、事業成長に伴い旧倉庫は限界を迎えていました。ピッキングだけで40名が1日10kmも歩くアナログ運用が常態化し、ついには委託先から出荷能力の限界を指摘される事態に。同社は「このままでは物流が事業成長の足枷になる」と危機感を抱き、コロナ禍という困難な時期にあえて倉庫移転とAGV導入による物流DXを決断しました。
わずか1年半という短期間で新センターを立ち上げ、PALと共にAGV79台を導入。その結果、ピッキング人員を約70%削減し、出荷生産性も大幅に向上させました。今回は物流部門を統括する敷地義久様に、PAL選定の背景から導入後の劇的な成果、そして全自動化を目指す今後の展望についてお話を伺いました。
事業成長の限界を迎えた旧倉庫と、コロナ禍での決断
──現在の新倉庫に移転する前は、どのような体制で倉庫を運営されていたのでしょうか?
新倉庫に移転するまでは、本社と同じビルの中で事務所と倉庫を併設して運営していました。
2009年から2010年頃までは、自社で直接派遣やパートを雇用して倉庫を運営していました。ただ、派遣のクーリングオフ問題が発生して、規模が大きくなればなるほど対応できなくなりました。それで3PL事業者へ業務委託に切り替えたという経緯があります。
──3PL事業者との役割分担は、どのようになっていたのでしょうか?
3PL事業者に丸投げすることはせず、路線業者の選定やあらゆる交渉は全て自社で行っていました。新倉庫プロジェクトでは、こうして蓄積された知見を活かし、代表・システム責任者・物流責任者の3名でプロジェクトチームを組成しました。倉庫・マテハン・3PLの全選定を自社主導で進めることができたのは、この知見があったからです。
──旧倉庫では、具体的にどのような課題を抱えていたのでしょうか?
本社ビル内で事務所と倉庫を併設していて、WMSすらない完全アナログ運用でした。ピッキングだけで40名以上が必要で、1人あたり1日10kmも歩く。まさに「スーパーのタイムセール状態」でしたね。
さらに倉庫が複数階にわたっていたので、エレベーターでの人や物の移動が必要になります。出荷が増えれば増えるほど生産性が悪化する、負のスパイラルに陥っていました。ついには業務委託先から出荷能力の限界を指摘されて、事業成長の足枷になっていました。
──物流改革に踏み切ったきっかけは何だったのでしょうか?
事業が年々成長し出荷量が増加する中、旧倉庫は完全にキャパオーバーとなりました。付け焼き刃的な増床では追いつかず、「このキャパではダメだ。もっと出荷能力も上げないといけない」と判断しました。
コロナ禍でも医療業界は需要が伸びていました。そこで、「明けてから動いたら間に合わない」という先見的な経営判断のもと、コロナが明ける前から動き始めました。その結果、資材の納期をタイトに確保でき、わずか1年〜1年半で計画・設計・稼働を実現することができました。
PALに委託した理由は、AGVとの親和性と、前向きにチャレンジする姿勢
──新倉庫を構想する際、どのような方針で進めたのでしょうか?
有事の際にも出荷できることを重視しました。倉庫は耐震倉庫を選定して、震度6以上の確率が1.9%以下という地質調査の結果も出ていました。
マテハンについては、高層ラックではなくAGVを選択しました。平棚置場に近いAGVなら汎用性を確保できると判断したのが理由です。導入したAGVは柔軟にカスタマイズできるタイプで、我々がマニュアル運用で培ってきた作業の融通を反映できました。
──PALとはどのような経緯でパートナーになったのでしょうか?
マテハンのオペレーション側を担当できる企業を探していたところ、AGVの商社さんからPALさんを紹介してもらいました。PALさんのプレゼンを拝聴して、最終的に合致してパートナーを組むことになったという次第です。
──選定するにあたってPALのどのような点を評価したのでしょうか?
まず、「それ無理です」と諦めないところですね。我々が求めている答えに対して、「どうやったらできるか」を前向きにチャレンジする姿勢があります。それから、レスポンスが速い。今では、成果を残せるところまで継続して取り組んでくれて、「共に分かち合えるまで見届けていける関係」を築けています。
──特に他社と違う点はありましたか?
他社もいくつか検討したのですが、費用感や提案内容が我々が求めているものと大きく乖離していました。いずれも大掛かりで1個1個の工程に多額の費用をかける提案ばかりで、費用対効果が合いませんでした。
PALさんは、導入したAGVとの親和性が高くて、当社の成長やブラッシュアップにレスポンス良く対応できました。この柔軟性が、他社との大きな違いでしたね。
AGV79台+WCS+「カルガモ方式」で倉庫を抜本改革
──具体的にどのようなシステムを導入したのでしょうか?
AGV79台とPALさんが提供するWCS(倉庫制御システム)で、当社のWMSからロボットへのオーダー管理まで一括管理しています。ピッキングステーションは12カ所設置して、ロボットが商品を運んでくる仕組みを構築しました。
さらに、1品ごとに寸法・重量をマスタ登録して、注文時点で最適な箱サイズを自動判定するアルゴリズムも導入しました。自動梱包機、荷物のサイズ・重量の自動計測、運送会社とのAPI連携による梱包エリアの作業効率化なども実現しています。
そして、これらのシステムと現場の両面オペレーションの担当として、PALさんの責任者が現地倉庫に駐在してくれました。
──導入プロセスはスムーズに進んだのでしょうか?
必要な時にウェブ会議でリアルタイムに打ち合わせを行いました。AGVの輸入や棚の設営など、タイトなスケジュールでしたが、PALさんが短期間で現場構築を実現してくれました。厳しいお願いにもかかわらず、なんとか間に合わせるようご尽力いただき、本当にありがたかったです。
──導入後にどのような課題が発生し、どう乗り越えたのでしょうか?
在庫移転の時に、まず課題が出ました。Aランク品、つまり大型で大量の商品を最後に入れた時に、オーバーフローが発生しました。ただ、棚の整理で短期間に修正できました。それから、ロボットのルート設定が想定とずれて生産性が出ないという問題もありました。PALさんがロボットの軌跡を分析して、改善提案をしていただきました。日々繰り返し分析・改善を行って、約3カ月で初期稼働が収まり、徐々に生産能力が向上していきましたね。
──他にも独自の改善に取り組まれていると伺いましたが、どのようなものでしょうか?
商品入りの箱と梱包用の箱を途中で抱き合わせるシステムを開発中です。私が勝手に「カルガモ方式」と命名しているのですが、作業者が梱包ステーションから出ずに梱包できるようになります。協力会社のアルゴリズムと当社の寸法情報を紐付けて、実運用に落とし込んでいるところです。さらなる梱包生産性向上を目指しています。
70%の人員削減と、初期稼働から大幅に向上した生産性
──導入後、どのような成果があったのでしょうか?
ピッキング人員を40名以上から12名へ、約70%削減できました。1人あたりの歩行距離も、1日10kmからステーション内のわずかな移動へ激減しました。作業者の負担が激減したのは明白でした。
出荷生産性については、新倉庫の稼働開始から最初の3カ月と現在を比べると、格段に向上しています。生産性は大きく伸びており、現場のメンバーも改善を着実に進めてくれています。
とくに、導入したAGV79台が継続的に商品を運搬することで、人員40名以上に匹敵する運搬能力を発揮している点が大きな要因です。その結果、投資に対する費用対効果も非常に高いものとなっています。
──数字には表れない変化もあったと伺いましたが?
人の確保という面でも、明らかに負担が減りました。ピッキングに必要な人員が大幅に削減されたので、人を集める苦労が軽減されました。それから、生産性の大半を数値化できるようになりました。15時締め・当日出荷のリードタイムを守るための生産性が明確化されています。
──PALとの関係をどう評価していますか?
「相互関係を築くパートナー」という位置づけですね。当社が目標地点を設定して、PALさんが現状分析と達成手段を提案する。そういう相互関係を築いています。
システムと現場を一括で見てくれるので、「システムはシステム、現場は現場」という混乱が起きません。生産性の分析から改善・ブラッシュアップまで取り組んでくれて、見える化によって費用対効果を高めてくれています。
──今後、PALと共に実現したいことは何でしょうか?
最終目標は「全自動化」です。ピッキング・工程間搬送・梱包の自動化を目指しています。多品種小ロット・取扱注意品への対応が課題なのですが、AI判断技術の進化を見据えて段階的に推進したいと考えています。
PALさんには、「同じ目線で自動化を目指していきたい」という期待を寄せています。成果を共に分かち合えるまで見届けていける関係を継続したいですね。